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プロスペクト
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三戦英雄傳 第三十一回~丁原、病に倒れる~ 姓はロコ、名はふるーちぇ、字は不明。都・洛陽の生まれで代々高級官吏を生み出してきた名門・ ロコ一族の者にして霊帝と●習院の御学友であった。元の名を音速の667と言う。(中略) 音速の667は、異国の茶に対するこだわりが強く、『魔李阿ー寿・府零ー流』という店の 茶葉しか認めなかったが、如何せん、小僧の教育がなっていなかった。音速の667は、店の 小僧の態度に怒りを覚えつつ、店に通うこと数年、ある日所望しない茶葉を強引に勧める小僧に 腹を立て斬り殺してしまった。 生まれて初めての殺人に音速の667は、罪の意識に懼れ戦きながらも、名門の自分が犯した 殺人という図式に酔っていた。彼は己の存在を他の追随を許さぬ破格のものとするために、ロコ一族の名を天下に 知らせしめるために、『後漢王朝』『光武帝』『霊帝』と竹簡に書いた己のネタ本を引きずり出し、 最後の自慰行為に耽ると半刻で6回ほど放出し、自ら己に宮刑を科した。ロコふるーちぇは早漏で あった。彼は出血多量で遠のく意識の中、街頭に出ると己の新しい名を往来の人々に求めた。 人々の好意と悪意により音速の667は『ロコふるーちぇ』という名を得た。 後の世に「ロコふるーちぇは女性」説が流れたのは、単に「名門の子弟が宦官になるはずなど無い」と いう歴史好きによる願望の具現だとも言われている。ロコ一族の名は確かに後漢全土に広がった。 だが、それは栄誉のものではなかった。形はどうであれ、ロコふるーちぇの願いは叶ったわけである。 ~正史『晋史』宦官 ロコふるーちぇ傅より~ 「徽皇子死す」の知らせを聞いた二人の者は、それぞれ ――そうか。 ――アゥアウ。 と感想を口にしました。 前者は晋国の軍師・丁原、後者は霊帝の長子・弁皇子でございます。 弁皇子へ弟である徽皇子の死を伝えたのは、陳羣と一人の宦官でありました。 ロコふるーちぇ:「おお、なんとおいたわしや!! 弁皇子はかようなお姿に、 徽皇子は夭折、残るは協皇子のみ。いったい、後漢の未来はどうなってしまうのか」 陳羣:(名門・ロコ一族の栄華も昔のことよ…一族の男子を宦官にするとは。それとも、これも ロコ一族の策略か…? 古来より権力闘争の鍵を握る後宮に唯一出入りできるのは宦官のみであるからな。 考え過ぎか) 陳羣は傍らで激し、涙を流すロコふるーちぇに冷ややかな眼差しを向けておりました。このロコ ふるーちぇ、元より一途と言いますか、狂信的と言いますか、恐ろしいものを秘めた男でありました。 「俺は妻など要らぬ!! 俺は大漢(漢王朝)と婚姻する!! 俺は国家とのみ性交渉をする童貞三公になる!!」と 公言して憚らなかったロコふるーちぇ。暴走した彼は、固い信念の元、自慰行為に於いても後漢王朝の栄光のみを 妄想し、童貞の身のまま宦官になったのでありました。 ロコふるーちぇ:「皇子、弁皇子。弟君が、徽皇子がお隠れあそばしたのですぞ!!」 弁皇子:「だあだぁ」 ロコふるーちぇ:「せめて、せめてこの洛陽に袁紹か丁原、どちらか一人でもおれば。ああ、宦官のこの身が恨めしい!!」 弁皇子:「あばばばば」 ロコふるーちぇ:「陳長文殿は、この状態を何とも思わぬのか!! 貴公、それでも名門・陳家の者か!!」 陳羣:(ほお、ロコ一族とはいえ、宦官もこの私に敬語を使わぬとは随分と偉くなったものだな) 陳羣は、予想していた言葉を耳にすると、充血さえ見せぬ澄んだ瞳を涙で潤ませロコふえるーちぇを見つめました。 ロコふるーちぇ:(どきっ! お、俺様は男色ではないぞ。馬鹿) 異性経験も同性経験も無いロコふるーちぇは陳羣の見せたなよなよとした女性らしい表情に劣情を覚え、狼狽しました。 陳羣:「あまりにも悲しく恐れ多いことなので、涙さえ怖気を奮って流れないのでございます」 ロコふるーちぇ:「そ、そうか。それは悪いことをした」 このロコふるーちぇと陳羣の遣り取りは、二人の性格を良く表すエピソードとして『世説新語』に収められております。 陳羣:(袁紹に丁原ねぇ。私の相国の座を暖めているだけの雌鳥をねぇ。丁原は雲隠れしたままだが、どうしたものか) 陳羣は同じ名門として袁紹に軽い嫉妬を覚えつつ、忠義の士・丁原の行方を案じておりました。 どうやら、陳羣は己の認めたものしか人間として扱わぬ人種のようでございます。 同じ頃、丁原より知らせを受けた晋国では天地を揺るがすほどの動揺に揺れておりました。 袁術:「なんと、それは真か!!」 丁原:「はっ、間者より仕入れた確かな情報にございます」 袁紹:「なんと…なんという…龍が淵に潜むのは何のため。我らがこうして晋国で政治を行うのは 徒に惰眠を貪るために非ず。全て、後漢に、徽皇子に期待してのことだったというに」 元より予想していたこととはいえ、やはり気持ちの区切りがつかなかったのでしょう。 袁紹は気落ちしたのか、崩れ落ちるように椅子に座りました。 曹操:「長子の弁皇子は未だご病状が思わしくないようだ」 奇矯屋onぷらっと:「暗愚な皇帝、蛇蝎の如き宦官、妲己の生まれ変わりの如き皇后…いったい後漢は これからどうなってしまうのだ」 袁術:「いっそ、兄上が新しい皇帝となられては」 袁術が袁紹に帝位に就くよう、言葉を漏らしました。 袁術の言葉に一同は息を飲みました。 荀攸:(誰もが一度は考えたことのある、口にすることを憚ってきた言葉。いとも簡単に 口にできるのは、名門育ちゆえの鈍感さか) 奇矯屋onぷらっと:(袁紹殿が帝位に就くつもりなら、この武にて全力で支えるのみ) 曹操:(本初、お前も代々漢の禄を食んできた身。漢朝に反旗を翻すのか?) 曹洪:(新通貨に宮殿の建築、巨額の金が動くな。商人にとっては戦乱こそが大きな商売を 生み出すものよ) 袁術:「兄上! ご決断を」 袁紹:「ならぬ」 一同の昂揚する気持ちを抑えたのは袁紹の一喝でございました。 袁紹の言葉に、丁原が「ぱちぱち」とゆっくりとした調子で拍手をしました。 丁原の義手から洩れる拍手は、まるで何かの演奏のようでございます。 丁原:「それでこそ殿。今、ここで皇帝を僭称しては我らが討伐される身となります。 大義名分を無くした集団はただの暴徒でございます。ゆめゆめお忘れ無きよう」 袁術:「そうだな…済まなかった。これからも、暴走しそうになったら叱ってくれ」 言葉の代わりに丁原は袁術に微笑みました。丁原が袁紹に何か伝えようと口を開くと 丁原:「うっ」 袁術:「軍師殿!! いかがされた!!」 袁紹:「軍師、どうされた」 丁原:「し、失礼」 丁原は真っ青な顔で口元を抑え、厠の方へと消えました。 袁術:「何か悪いものでも食べたのだろうか」 袁紹:「夏は食べ物が傷みやすいからのお」 荀攸:(あの尋常では無い様子……胃の病の前兆だな。いや、もう長くは無いかもしれぬ ……丁原が亡くなっても晋国は今の状態を保てるか……) 曹操:「軍師殿は大丈夫であろうか。そういえば、こういった話が大好物の果物キラーの姿が見えぬな」 曹洪:「このところ、姿を見かけませぬ」 ひょーりみ:「また袁家十人衆の職務であろうか」 曹操:「近頃の果物キラーの動きはわからぬのお」 人々が丁原の容態と果物キラーの行方を詮索していると宮女の悲鳴が聞こえました。 宮女:「きゃぁああああああああ!!! 軍師様!! しっかりなさって下さい!!」 曹操:「何事じゃ!!」 中常侍うんこ:「軍師殿が廊下にて倒れておられる」 曹操:「倒れた、じゃと」 荀攸:(病とは、人目を避けて進行するもの。もはや手遅れか) 曹操:「医者だ! 医師を呼べい!!」 さてさて、晋国にも混乱が生じたようでございます。 時代は乱世、乱れるのは世情と人心だけではないようでございます。 三戦英雄傳、気になる続きは、また、次回。 三戦英雄傳 第三十二回~明かされる病の名~ 丁原が病に倒れた頃、晋国で安否を噂されていた果物キラーは成都におりました。 この物語の中で成都がどのような都市であったか、皆様覚えておいででしょうか。 そう、黄巾賊の総本部のある都市でございます。 黄巾賊1:「止まれ、何やつ。名を名乗れ」 果物キラー:「私は、都・洛陽の馬商人、呂不韋と申す者。聖天使ザビエル様にお目通り願いたい」 黄巾賊2:「呂不韋、とな。はて、どこかで聞いたことのある名だが……」 果物キラー:「我が呂家は、都では名の知れた商人の家。遙か成都まで名が知れているとは 光栄でございます」 黄巾賊1:「おう、そうか。都で名の知れた商人とあらば教祖に会わせなくては失礼というもの。 参られよ」 果物キラー:「はっ」(咄嗟に呂不韋の名を使ったが、ここの奴らが無学で助かった) どうやら、果物キラーは馬商人に身を変え、聖天使ザビエルに面会をするつもりのようです。 これは、袁家十人衆の役目なのでしょうか。はたまた、果物キラー単独の行動なのでしょうか。 徽皇子の件以来、丁原と果物キラーはお互い相容れぬようでございましたが。 果物キラーが黄巾賊1の案内のままに歩いて行くと、何やら騒がしい声が聞こえてまいりました。 聖天使ザビエル:「あはははは-、彼女いるってこんなに楽しいとは思わなかったー∬》´_ゝ`》つ†」 聖天使ザビエルの彼女:「もう、ザビ君たらっ」 聖天使ザビエル:「もう毎日書簡送りまくりー∬》´_ゝ`》つ†」 聖天使ザビエルの彼女:「一緒に住んでるんだし、話せばいいのに」 聖天使ザビエル:「恋人同士らしく書簡の遣り取りがしたいんだよ∬》´_ゝ`》つ†」 黄巾賊1:「こちらでこざいます」 果物キラー:(これが、聖天使ザビエル。後漢に反旗を翻した黄巾賊の首領か。先が、見えたか) 聖天使ザビエル:「あ、君はいつぞや金子とか兵糧とか援助してくれた商人だよね。ええと∬》´_ゝ`》つ†」 果物キラー:「呂不韋にございます」 聖天使ザビエル:「ああ、そうだった。今日も何かくれるの?∬》´_ゝ`》つ†」 果物キラー:「はっ。聖天使ザビエル様のため、本日は軍馬を」 聖天使ザビエル:「いつも悪いね! ゆっくりしていってね∬》´_ゝ`》つ†」 果物キラー:「はっ、ありがたき幸せ」 なんということでしょう。果物キラーは、よりによって、黄巾賊へ金品の援助していたようです。 いったい、この行動、晋国は把握している事項なのでしょうか。 一方、晋国では病の床についた丁原が人払いをした後に、袁術を呼び寄せていました。 丁原:「無理なお願いをしたようで」 袁術:「なに、たった一言で皆の鬱憤が晴れるならいくらでも道化役を引き受けましょう」 丁原:「我が殿を皇帝に擁立せんとする動きには薄々気づいておりましたが、今は 時期尚早。かと言え、誰かが口にし、殿が諫めなくては前に進みませぬ。 そこで殿の弟君のお頭に芝居をお願いした次第」 袁術:「はっはっは。軍師殿は、まこと気の回ること風の如しじゃの。…顔色が、良くなったようだ」 袁術は、丁原の顔色を確かめるように、まじまじと顔を見つめました。 丁原:「気休めは止して下さい。自分の体のこと。私が一番わかっております」 袁術:「ほお。そうか。軍師殿は医学にも造詣が深かったとはな。これは意外。では、ご自分の 病名を何と考えておられるのか」 丁原:「恐らく胃の病でありましょう。酷い吐き気で飯も喉を通らず……人間食べることができなくなれば 先は見えたもの。私は、そうして何人もの人間が亡くなるのを見て参りました。私も、もう長くは 無いのでしょう?」 丁原は、諦めと期待を込めた眼差しで袁術の顔を覗き込みました。袁術は、丁原と目が合うと、 天井を仰ぎ、飾り窓の向こう側へ目を遣りました 袁術:「丁原殿。やはり、医術のことは医師にしかわからぬものですな」 丁原:「…どういうことでございましょう」 袁術:「どうか、お気を確かに聞いて下され」 袁術は、丁原の華奢な肩を支えるように抱き、自ら確認するかのように言いました。 袁術:「医師の見立てでは、貴殿は懐妊されたと」 丁原:「え」 袁術:「四月を迎える頃であろうと。脈の様子やら、さまざまな見立てで出た結果じゃ。 吐き気も悪阻というものであろう」 丁原は、血の気のない唇を震わせながら、呟きました。 丁原:「かい…にん……私が身ごもったと。私は、男。男の私が懐妊など……」 袁術:「医師は、貴公を本物の女性だと思い込んでいた。なるほど豊かな乳房があり、 顔など美女そのものだ。それに兆候はあったはず。月のものもあり、吐き気の他に 乳房が張り……」 袁術の言葉に丁原の顔色はますます青ざめてゆきます。 丁原:「私があの男の種を? 後漢を蔑ろにするあの逆賊の汚らわしい種を? 私が……」 袁術:「男を女にするとは、小魔玉の医術は、まさに神の領域にまで達したのだ」 丁原:「いやああぁああああああああああああああ!!!!」 袁術:「丁原殿!!」 丁原は、突如立ち上がり病人とは思えぬ勢いで走り出し、幾度となく卓の角へ腹をぶつけました。 丁原:「私は穢れてなどいない! 穢されてなどいない!! 懐妊などしていない!!」 袁術:「何をなさる!!」 袁術は、丁原へ平手打ちをし、丁原は床へ倒れ込みました。 丁原:「穢れてなどいない。穢されてなどいない……」 袁術:「宿った子には罪は無い。どんな人間でもその子には、たった一人の父親であり母親なのだ。 堕ろすこともできようが、後悔してからでは遅い。よく、考え養生ずることだ」 袁術は丁原に上着を掛けてやると、両手を打ち、侍女を呼びました。 袁術:「これ、軍師殿はご病状が思わしくない。お前たちでよく見るように。何かあれば、すぐに 知らせるように」 丁原は、ただ、涙を流すだけでした。それは、悔し涙なのか、はたまた、想定外に己の腹に宿った 我が子への謝罪の涙なのか、丁原にもわかりませんでした。 さてさて、物語はどうなってしまうのでしょうか。丁原の腹の子は無事、生まれるのでしょうか。 三戦英雄傳、気になる続きは、また、次回のお楽しみ。 三戦英雄傳 第三十三回~陳羣の謀略~ 晋国では、丁原が望まぬ懐妊を知った頃、洛陽ではどのような動きがあったのでしょうか。 永安二年八月二十五日、都・洛陽にある陳家の屋敷に多くの人間が集まりました。 集まった者は、それぞれ老若男女肌の色も髪型も違う者ばかり。年長の男女が少女を 連れてきております。数人の男女は少女たちの親なのでしょうか。それとも。 ただ言えるのは親と思しき大人たちの放つ目の光が、共通して鋭いことでございました。 集団の中に一人の青年がやってきました。美しい手、滑らかな肌。皆様覚えておいででしょうか。 潁川を国を代表する名家・陳家の陳羣でございます。 男1:「おお、坊ちゃま」 女1:「坊ちゃまお久しゅうございます。此度の商談は、是非、私のところで」 女は長い爪の生えた指で、陳羣の手に触れ、笑いかけました。陳羣は、怒るでもなく、 喜ぶでもなく人形のような顔を女に向けただけでした。 どうやら、この集団、商人のようでございます。集められた少女たちは商品なのでしょうか。 差し詰め奴隷商というところなのでしょうか。 女2:「ちょっと、アンタ汚いわよ。何色気使って商売に使おうってぇの」 女1:「へぇ、色気の無い女には使えないものね。色気があって、悪かったわね」 女2:「何さ!」 男2:「おい、やめんか。坊ちゃまの前で見苦しい」 男2の声に二人の女は、はっとした様子で互いの胸ぐらを掴んでいた手を離しました。 まあc:「おお、羣や。十年前だったかのお。お前が奴隷商たちに『未来の西施』を依頼したのは。 しかし、今やお前も妻子を持つ身。今更妻を所望するわけでもあるまいて。妾か、の」 陳羣:「お祖父様は相変わらず知者でありながら鈍感のフリをなさるのがお好きなこと。私は 妻以外の女に金も暇も割かれるのは嫌なのでございます。妾など」 まあc:「ふぉっふぉっふぉっ」 陳羣:「まあ、良い。ところで私はお前たちに大金を払い、十年もの猶予を与えた。それなりの 成果物はあるのであろうな」 陳羣の声に、奴隷商たちはばっと平伏し、一同「はっ」と返答をしました。 陳羣:「それでは一人ずつ見せてもらおうか。悪いが私の目に叶わぬ者、選ばれた一人以外は 後顧の憂いを絶つためにも死んでもらうが、異存は無いな?」 男1:「勿論でございますとも」 女3:「元はこれらも、坊ちゃまの、陳家のご支援があればこそ、この年まで生きてあまつさえ 身分不相応な教育まで受け、綺麗な着物まで着て生きてこれたのです。なんで怨みましょう」 陳羣:「私は十年前、ある目的の下、国中で名妓と名高い美女の生んだ女児たちを親に掛け合い 譲ってもらった。それが、そなたたちとそなたたちの子。やはり美女の娘は美女になるのであろうと 思ったのだが」 男3:「勿論でございます。うちの女房に似てうちの娘は間違いなく城を傾けさせるほどの 美女にはなりますぜ」 陳羣:「城をね……」 陳羣の前で少女たちの父親が、母親が次々と自分たちの娘の美貌と教養を自慢し、 娘に一芸を披露させます。ある娘は詩歌を、ある娘は踊りを、ある娘は潁川の歌を 披露しました。 皆、漢民族の女性美を秘めた手足の細い娘ばかりでした。全部で二十人ほどでしょうか。 誰もが「自分が選ばれる」と信じて疑わない自信に溢れた顔をしておりました。 陳羣は少女たちの貌を、芸を弓で獲物を射るような鋭い視線で眺めておりました。 やがて、一人の少女の番になりました。少女の瞳は新緑のような深い碧色をしており、 髪は馬の毛のように栗色でした。背は低く、少々、肥えておりました。 陳羣:「混血か」 男4:「はっ。これなるは春梅と申す娘。異国の血が入っております故、少々脂が 乗りすぎておりますが、得も言われぬ体臭がたまらないと申す者もおります」 陳羣:「異国の血を引く娘……よし、決めた。此度の商談、この春梅に決めた。 後の者は始末せい」 陳羣の一声に他の少女たちの悲鳴、奴隷商たちの嘆き、さまざまな声が 陳家の庭に響き、庭土には吸収しきれない十数名の少女の血が大雨の 後の水たまりのように赤くてらてらと光っておりました。 男4:「坊ちゃま、うちの春梅をお選びいただき、ありがとうございます」 男4の礼に陳羣は、ただ軽く笑みを見せただけでした。白い歯が見える程度でした。 男4:「坊ちゃまは、周公旦にでもなるおつもりで?」 陳羣は、男の問いには答えず、左右の下男に向かい言いました。 陳羣:「言い忘れていた。春梅以外の者も始末しなさい。余計な知恵のある者は困る」 男4:「ま、待ってくれ。坊ちゃま、お情けを!!」 奴隷商たちは弁解をする間も与えられず、陳家の刀の露と消えました。 まあc:「ふぉっふぉっ、儂も知らぬふりをする方が良いのかのお。我が孫ながら 怖い怖い」 陳羣:「何を仰います。お祖父様。私たち清流の時代は、まだまだこれからではありませんか」 陳羣は、祖父の顔を見やり初めて笑いました。さてさて、十年も前から陳羣は 何やら計画を立てていた様子。陳羣の計画とは。謎の少女・春梅の運命は。 三戦英雄傳、続きはまた次回。
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東方弦奏響(トウホウゲンソウキョウ) サークル:TAMUSIC Number Track Name Arranger Original Works Original Tune Length 01 東方バイオリン1 視聴ver TAM [1 42] 02 東方子守唄 視聴ver TAM [0 57] 03 東方バイオリン 視聴ver TAM [1 33] 04 東方まんがまつり 音盤文々。2 視聴ver TAM [1 54] 05 東方 60年目の裁判 バイオリン四重奏 TAM [1 12] 06 東方メドレー 超絶技巧系ピアノ生演奏 TAM [20 51] 07 東方文花帖-05-レトロスペクティブ京都 バイオリン四重奏 TAM [3 56] 詳細 メロンブックス仙台店2周年記念CD メロンブックスにて委託(店頭専売) Credit 音源・演奏協力者・ゲストメンバー 水奈瀬いつき(PURE-POLLUTION) A (Studio A ) レビュー 名前 コメント
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東方混淆夜 サークル:Cat Styles Number Track Name Arranger Lyrics Vocal Original Works Original Tune Length 01 Scarlet Vlad 白猫 黒猫 hinaco* 東方紅魔郷 U.N.オーエンは彼女なのか? [-- --] 02 肩越しの懐古 白猫 黒猫 hinaco* 東方文花帖 レトロスペクティブ京都 [-- --] 03 境界は、幻想を殺すか Tat-2 黒猫 hinaco* 東方妖々夢 ネクロファンタジア [-- --] 詳細 コミックマーケット77(2009/12/30)にて頒布 イベント価格:500円 ショップ価格:なし レビュー 名前 コメント
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そらいろパラソル サークル:そらいろパラソル Number Track Name Arranger Lyrics Vocal Original Works Original Tune Length 01 ティアオイエツォン ? ? みー 東方妖々夢 ティアオイエツォン [-- --] 02 レトロスペクティブ京都 ? ? みー 東方文花帖 レトロスペクティブ京都 [-- --] 03 無何有の郷 ? ? みー 東方妖々夢 無何有の郷 [-- --] 04 名も無き橋にて ? ? みー 東方地霊殿 渡る者の途絶えた橋 [-- --] 05 ice_⑨ueen ? ? みー 東方紅魔郷 おてんば恋娘 [-- --] 06 Glorious Revolution ? ? みー 東方花映塚 フラワリングナイト [-- --] 07 オリエンタルダークフライト ? ? みー 東方花映塚 オリエンタルダークフライト [-- --] 08 東方妖々夢 ? ? みー 東方妖々夢 東方妖々夢 [-- --] 詳細 博麗神社例大祭7(2010/3/14)にて頒布 イベント価格:500円 ショップ価格:?円(税込:?円) レビュー 名前 コメント
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【TOP】【←prev】【Wii】【next→】 化石モンスター スペクトロブス タイトル 化石モンスター スペクトロブス 機種 Wii 型番 RVL-P-RXXJ ジャンル アクションRPG 発売元 ディズニー・インタラクティブ・スタジオ 発売日 2010-6-17 価格 7140円(税込) 駿河屋で購入 Wii
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幻想禄 サークル:電奏楽団 Number Track Name Arranger Original Works Original Tune Length 01 妖々夢 天門 東方妖々夢 妖々夢 ~ Snow or Cherry Petal [-- --] 02 神々が恋した幻想郷 天門 東方風神録 神々が恋した幻想郷 [-- --] 03 懐かしき東方の血 天門 東方永夜抄 懐かしき東方の血 ~ Old World [-- --] 04 今昔幻想郷 天門 東方花映塚 今昔幻想郷 ~ Flower Land [-- --] 05 上海紅茶館 天門 東方紅魔郷 上海紅茶館 ~ Chinese Tea [-- --] 06 彼岸の塚 天門 東方花映塚 彼岸の塚 [-- --] 07 監獄ララバイ 天門 東方地霊殿 廃獄ララバイ [-- --] 08 ネイティブフェイス 天門 東方風神録 ネイティブフェイス [-- --] 09 Eternal Dream 天門 東方永夜抄 Eternal Dream ~ 幽玄の槭樹 [-- --] 10 レトロスペクティブ京都 天門 東方文花帖 レトロスペクティブ京都 [-- --] 詳細 博麗神社例大祭7(2010/03/14)にて初頒布 イベント価格:1,000円 ショップ価格:1,500円(税込:1,575円) レビュー 名前 コメント
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東方まんがまつり 音盤文々。Ⅱ サークル:TAMUSIC Number Track Name Arranger Original Works Original Tune Length 01 Help me, ERINNNNNN!! アフターのアフターVer. TAM / Vo:すし~ / 日叶遊理 東方ストライク Help me, ERINNNNNN!! [-- --] 02 六十年目の東方裁判 ~Fate of Sixty Years TAM 東方花映塚 六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years [-- --] 03 遠野幻想物語 TAM 東方妖々夢 遠野幻想物語 [-- --] 04 亡き王女の為のセプテット TAM 東方紅魔郷 亡き王女の為のセプテット [-- --] 05 ラクトガール ~少女密室 TAM 東方紅魔郷 ラクトガール ~少女密室 [-- --] 06 レトロスペクティブ京都 TAM 東方文花帖 レトロスペクティブ京都 [-- --] 07 天狗が見ている ~Black eyes TAM 東方文花帖 天狗が見ている ~Black eyes [-- --] 08 風神少女 TAM 東方文花帖 風神少女 [-- --] 09 上海紅茶館 ~Chinese Tea TAM 東方紅魔郷 上海紅茶館 ~ Chinese Tea [-- --] 10 天空の花の都 ようか 東方妖々夢 天空の花の都 [-- --] 11 恋色マスタースパーク TAM弦奏楽団 東方永夜抄 恋色マスタースパーク [-- --] 12 遠野幻想物語 A 東方妖々夢 遠野幻想物語 [-- --] 13 竹取飛翔 ~恋文~ TAM / Vo:saori 東方永夜抄 竹取飛翔 ~ Lunatic Princess [-- --] 14 鳥の詩 TAM AIR 鳥の詩 [-- --] 15 夏影 TAM AIR 夏影 [-- --] 16 Super mario brothers TAM [-- --] 17 Super mario brothers3 TAM [-- --] 18 Super mario world TAM [-- --] 19 Never Give up TAM Sa・Ga 2 秘宝伝説 [-- --] 20 安らぎの大地 TAM Sa・Ga 2 秘宝伝説 [-- --] 21 FF6 ティナのテーマ TAM ファイナルファンタジーVI [-- --] 22 FF6 戦闘 TAM ファイナルファンタジーVI [-- --] 23 FF6 セリスのテーマ TAM ファイナルファンタジーVI [-- --] 24 FF5 ビッグブリッジの死闘 TAM ファイナルファンタジーV [-- --] 詳細 前作「東方まんがまつり 音盤文々。」で未収録のライブ音源+新曲を収録 サンシャインクリエイション34(2007/02/11)にて初頒布 イベント価格:1000円 ショップ価格:1365円 Arranger A :(Studio A ) ようか:(雪の足跡) レビュー 名前 コメント
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虚舟 UTZROBUNE サークル名:WAVEDRIVE Number Track Name Arranger Original Works Original Tune Length 01 春の湊に SIV 東方星蓮船 春の湊に [04 45] 02 キャプテン・ムラサ(NEO Mix) SIV 東方星蓮船 キャプテン・ムラサ [03 18] 幽霊客船の時空を越えた旅 03 レトロスペクティブ平安京 SIV 東方文花帖 レトロスペクティブ京都 [05 21] 東方星蓮船 平安のエイリアン 04 虎柄の毘沙門天 SIV 東方星蓮船 虎柄の毘沙門天 [04 36] 05 感情の摩天崖 SIV 東方星蓮船 感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind [04 10] 06 endless cruiser SIV 東方星蓮船 プレイヤーズスコア [05 06] 空の帰り道 ~ Sky Dream 詳細 コミックマーケット77(2009/12/30)にて頒布 イベント価格:?円 ショップ価格:525円(税込) レビュー 名前 コメント
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時間ははやてがレザードを追い始めた頃、オットーとディードと共闘する事となったヴィータは、 目の前で対峙するカノンに狙いを定めて、シュワルベフリーゲンを八発撃ち抜き牽制、 続いてディードがカノンに迫り、それに合わせるかのようにオットーがレイストームを撃ち抜く。 しかしカノンは左手を向けてバリアを張りシュワルベフリーゲンを弾き、 次に右手をディードに向けて直射砲を撃ち抜くが、オットーが放ったレイストームが障壁となってこれを防御、 その間にディードがカノンの懐に入り、ツインブレイズをクロスさせて振り下ろすが、 カノンのバリアを砕く事が出来ず、むしろ右手から巨大な魔力弾を放たれ地面に叩き付けられるディードであった。 リリカルプロファイル 第三十三話 解放 それを見たオットーは怒りのままレイストームを撃ち放つが、カノンのバリアを砕くところまでには至らなかった。 すると今度はヴィータが迫りカートリッジを二発消費、ギガントフォルムに変え振り抜くと、その衝撃によりバリアにひびが入る、 其処でヴィータはもう一撃とばかりに振り下ろしバリアを破壊するが、カノンはすぐさま後方へと移動、 右手をヴィータに向けてグラシアルブリザードを放ち氷の刃がヴィータに襲いかかる。 しかしヴィータはパンツァーヒンダネスを発動させて攻撃に耐えていると、地上からディードが姿を現し、 ある程度の距離を保つと、ツインブレイズの一刀を高々と掲げエネルギーで出来た刀身を伸ばして一気に振り下ろす。 ディードの刀身がカノンに迫る中で左手を向けて攻撃を防御、 すると氷の嵐から姿を現したヴィータがギガントハンマーを水平に振り抜く、 しかしその攻撃も右手のバリアで防ぐカノンであったが、今度はオットーがレイストームを撃ち抜いた。 「貴様らぁ!!鬱陶しいわぁぁ!!!」 次の瞬間カノンは自分を中心にエクスプロージョンを撃ち出し、 ヴィータ、ディード、オットーの順に飲み込まれ、辺りは爆発による閃光に包まれた。 そして閃光が落ち着くと三方向に吹き飛ばされる三人がおり、 ヴィータはビルの壁に、ディードは道路に、オットーはビルの屋上にそれぞれ激突した。 「クソッ!なんて強さだ!!」 ヴィータは歯噛みしながら起き上がりカノンを睨み付けると、オットーとディードも同様に起き上がる。 …このまま不利な状況が続けば、倒されてしまうのも時間の問題、 それだけ手加減できない相手であると悟ったヴィータはエクストラモードを起動、 するとヴィータの赤い騎士甲冑が黄色に染まり、瞳も黄色く体の周りには稲妻が音を立てて走り、 右手は金属で出来ていたゴッツい手袋がつけられており、 グラーフアイゼンもまた金色に似た輝きを放ち、柄と槌はうっすらと離れて浮いていた。 ヴィータの変貌にオットーとディードは目を丸くする中で、 カノンは一人手を組み考える様子を浮かべ、言葉を口にする。 「なるほど…それが貴様の全力か……」 「覚悟しろよ!エインなんたら!!」 するとグラーフアイゼンの槌を下に向けて降ろしヴィータは半身で構え、 全身の稲光が輝く中、グラーフアイゼンを下から上へと投げ飛ばすかのように振り上げる、 すると荷電されあるグラーフアイゼンの槌が勢い良く飛び出し、槌は回転しながらカノンに迫ると、 カノンは右手を向けてシールドを張るが、シールドは簡単に打ち砕かれカノンの右肩を掠めた。 ミョルニルハンマー、電気変換能力により荷電・加速されバリア破壊の効果を持った槌を飛ばす奥義である。 無論、飛ばした槌と柄は雷によって繋がれており、手元へと戻す事が出来るのである。 「チッ…掠めただけか」 飛ばした槌が弧を描きながら柄に戻り、一つ舌打ち鳴らすも不敵な笑みを浮かべ見上げるヴィータ、 すると自慢のシールドを破壊されて怒り心頭といった表情を浮かべるカノンは左手をかざし、 サンダーストームを撃ち出しヴィータに迫ってくる。 だが次の瞬間カノンの周囲に魔力阻害効果を帯びた結界が張られサンダーストームを打ち消す。 オットーがレイストームを用いて結界を張りカノンを攻撃ごと封じたのである。 だがカノンは結界の中で魔力を高めると巨大な魔法陣を張り詠唱を始める。 「絶望の深遠に揺蕩う冥王の玉鉾、現世の導を照らすは赤誠の涓滴!!」 するとカノンの広域攻撃魔法グローディハームが発動、魔法陣の中心部分から毒々しい液体が結界に張り付いて溶かし、 結界を破壊すると辺りに四散し溶かしながら消えていく、その中で上空へと移動していたヴィータがカノン目掛けて急降下していた。 そしてグラーフアイゼンを一気に振り下ろし直撃、更に大地に突き刺さるようにカノンを激突させる。 カノンが激突した場所は土煙が立ち上がり、視界が悪い中ゆっくりと立ち上がる影を目撃したディードは、 左に持ったツインブレイズの刀身を伸ばし、影に向けて右から左へと振り抜く、 すると人影の部分で受け止められた感触を感じ、無理やり振り抜くと左の刃が砕け散った。 だがディードは間髪入れず今度は右のツインブレイズを延ばし一気に振り下ろすと、今度はスムーズに刃が通り砕ける事もなかった。 その感触に手応えを感じたディードであったが、土煙が晴れると其処には左腕を無くし右手を向けているカノンの姿があった。 「貴様!よくも俺様の左腕を!!!」 カノンは怒り心頭といった表情を浮かべ、その表情にディードは萎縮するとカノンはアースクレイブを発動、 ディードに石の刃が襲いかかる瞬間、右から強い衝撃を受けディードは吹き飛ばされると、 先程まで彼女が立っていた場所にはオットーが変わりにおり、その顔は少し微笑んでいるように思えた。 「オットー!!」 だがディードの声も空しくオットーの体に次々と石の刃が突き刺さり、最後に巨大な石の刃がディードの腹部を貫き、 その光景はまさに、百舌の速贄を彷彿としていた。 オットーの変わり果てた姿に膝を付き目を見開くディードであったが、 カノンの怒りは未だ収まらず再度ディードに右手を向け攻撃を仕掛けようとしたところ、 上空にいたヴィータが急降下してカノンに襲いかかり、カノンの左こめかみ目掛けグラーフアイゼンを振り抜き、 カノンは吹き飛ばされ瓦礫に直撃するが、カノンは一瞬にしてヴィータの体をバインドで縛りつけた。 「ぐう……其処でじっとしていろ!此奴が終わったら今度はお前の番だ!!」 そう言いながら瓦礫から姿を現すカノン、そしてその足でディードの下へ向かうと、 オットーの仇とばかりに逆上したディードが右手に持つツインブレイズを振り下ろす。 だがカノンは素早くバリアを張り受け止めると、右手を向けてサンダーストームを撃ち出し、 ディードは全身に雷を浴び絶叫を上げるとカノンは更に撃ち出し合計五発のサンダーストームを浴びせた。 その外道な振る舞いにヴィータは怒りを覚え、ディードの助けに入ろうとするがカノンの放ったバインドは、 レストリクトロックと呼ばれる強固なバインドである為、今だ解除する事が出来無いでいた。 一方で五発のサンダーストームを受けたディードは立ち尽くし目は虚ろであったが、 辛うじて意識を失ってはおらず右手が動く事を確認すると、 カノンが近づくギリギリまで待ち続け目の前に立った瞬間、勢いよく振り上げる。 だがカノンは既に様子を察していたようで右に半歩身を引いて攻撃を躱すと、 ディードの左手を掴み捻り込むように関節を決めて押さえつけた。 「この程度で…左腕代価、支払えたと思うなよ!!」 そう言うとそのままディードの左肩を外し、更に引き上げ腕の関節が引きちぎれていく音と叫び声が辺りに響き渡り、 カノンは左手を手放すと、全身をバインドで縛り上げ、今度は腹部に手を当てエクスプロージョンを発動、 ディードはなす統べなく光に飲み込まれその後爆発、辺りに爆音が鳴り響き一時静寂に包まれると、 力無く仰向けに倒れカノンはディードの顔側面を踏みつけると、ディードはか細く呻き声を上げる。 「しぶとい…まだ生きているとは」 そして止めとばかりにディードの頭を踏み抜こうとした瞬間、後方から強烈な光を感じ、 振り向くと其処には右のこめかみに血管を浮かばせ、徐々にレストリクトロックを引き千切り、 激怒の表情を浮かべ全身が稲光により強く輝くヴィータの姿があった。 「……なぜ怒る?貴様にとって此奴等は敵ではないのか?」 「あぁ確かに敵さ!だがなぁ…テメェみてぇな外道よりかはよっぽどマシだ!!」 確かにカノンの言う通りヴィータにとって二人は敵である、だが敵とはいえ共闘し感じた事があった。 それは二人の純粋さ無垢さである、つまり真の敵はこの純粋さを利用した者の存在であると言う考えにヴィータは至ったのである。 …しかしそれよりも今ヴィータはカノンの外道な行動の方に怒りを感じ、 二人よりもカノンを優先的に倒すという考えに至り、今こうして対峙していると怒気を含んだ口調で話す。 「…理解出来んな」 「……だろうな!!」 ヴィータの一言を合図に姿を消すようにカノンの後ろを取ると、グラーフアイゼンを振り抜くが、 カノンは全方向のバリアを張り攻撃を一時的に防ぎ更に間髪入れずアースクレイブを発動、 岩の刃がヴィータに襲いかかる中、ヴィータは一つ一つグラーフアイゼンで叩き割って防ぐと、 後方に移動したカノンがサンダーストームを撃ち鳴らす。 しかしヴィータの全身は稲妻を纏っている為か対したダメージとはならず、飛びかかるようにカノンに襲い掛かる。 しかしサンダーストームが効かない事はカノンは察していたようで、右手を向けてエクスプロージョンの準備を既に整えていた。 そしてヴィータがカノンの目前に迫り頃合いを見てエクスプロージョンを発動、 爆発が始まろうとした瞬間、ヴィータの脚にはフェアーテを纏っており、一瞬にしてその場から移動、 先程と同様カノンの背中を捕らえるとグラーフアイゼンをラテーケンフォルムに変え カノンの腰辺りに突き刺し更に先端が回転を始めそれにより電気が発生、カノンは叫び声を上げた。 「ぐあああああああ!!」 「まだ終わりじゃねぇ!!」 ヴィータは叫び上げるとその場でカノンごと回転を始め、そのスピードは全身に纏う雷の影響を受けて小さな台風と化していた。 すると今度は回転の勢いを維持したまま、大きく弧を描き上空へと上がりそのまま振りかぶると、 カートリッジを三発消費、そして地上に向けて大きく力強く振り下ろした。 「ラテェェェケン!!ハンマァァァァァ!!!」 するとグラーフアイゼンの槌が外れ、更に噴射口から大量の魔力が放出、 それにより更に加速されていき地上に突き刺さると激しい爆音が鳴り響く。 ヴィータの放った攻撃は遠目で見るとまるで、雷が落ちたかのような印象を受ける光景であった。 そしてグラーフアイゼンの槌が柄に戻るとゆっくりと降下、 攻撃の跡地は大きなクレーターとなりその中心には、 腹部に大きな風穴を空けたカノンがうつ伏せの状態で呻き声を上げていた。 「くっ…クソ……この…俺が………」 「…しぶてぇ野郎だ」 ヴィータは見下ろしながら言葉を口にしてとどめを刺そうと降りようとしたところ、 左腕を引きずりながらもディードが先に降りていきツインブレイズをカノンの首下に当てる。 「チッ!こんな…所で…終われる……かよ……!」 「いいえ、アナタは此処で終わりよ……」 そう言うとディードは躊躇無くカノンの首を跳ね足下に首が転がるが、 ディードは見向きもせず串刺しになっているオットーの下へと急いで向かう。 そしてオットーを見上げる形で見つめ、目から大粒の涙をこぼしていると、 微かだが…確かにオットーから小さな息遣いが聞こえてくる。 「オットー!!」 「……ディー…ド……」 ディードの声に反応したオットー、するとエクストラモードを解除したヴィータがゆっくりと二人に駆け寄り、 ディードはオットーを守る為、ツインブレイズを起動させて警戒すると、ヴィータは首を横に振る。 その後暫くすると医療チームが到着、チーム内にはマリーの姿もあり、 少し疲れた様子を見せながらヴィータに話しかけ始める。 「今日は満員御礼ね」 「どういうこった?」 最初はシャマル、次にティアナ、今はヴィータの要望を受けて、 これで六人目の戦闘機人を見ることになったという。 確かにマリーはギンガとスバルの調整に一役買い、戦闘機人の情報も頭に入っている、 だがいくら何でも要望しすぎではないか?…と愚痴をこぼすマリーであったが、 ヴィータの「緑茶ラテでも飲んで落ち着け」の一言で返され、 マリーは医療チームと共にこの場から去り、ヴィータも次の場所へと赴くのであった。 一方、ティアナは急いでスバルの下へ戻ると、二人の戦いぶりに唖然としていた。 遠目では藍紫色の魔力光と水色の魔力光が幾重にも重なり、至る所で火花が散る様子であった。 だが実際の戦闘は熾烈を極めていた、スバルはA.C.Sドライバーを常に起動させたまま攻撃を仕掛けており、 その突進力を生かして右のナックルダスターをギンガの頭部を狙って打ち抜くが、 ギンガは頭部を右に振ってこれを回避、逆に左の拳がカウンターとなってスバルの頭部を狙う。 するとマッハキャリバーがプロテクションを発動、ギンガのカウンターを受け止めるが、 徐に拳から手刀の構えに入ると高速回転、リボルバーギムレットを用いいるとバリアから火花が散り亀裂が入り始める。 するとスバルはA.C.Sドライバーを利用して瞬間的に後方に突進、バリアが砕け散る前に難を逃れたが、 ギンガは追い打ちとばかりに突進、続け様にリボルバーギムレットを振り抜くが、 スバルの右こめかみを掠める程度に終わり、先程とは逆にスバルの右拳がカウンターとなってギンガの左こめかみに突き刺さる。 それにより体勢を崩すギンガであったが、右足を踏み入れそのままスバルの懐に入ると、右拳を振り上げスバルの顎を捉える。 ギンガの一撃により顎は跳ね上げられ半歩引き隙間を開けると、左の手刀を拳に変えてナックルバンカーをスバルの脇腹目掛けて打ち貫いた。 その一撃によりスバルは右足を半歩下げ九の字に曲がり苦しみながら前のめりで倒れそうになるが、 その動きを利用してギンガの頭上に向かって弧を描くようにウィングロードを作り滑走、 自動的に右の踵落としを繰り出しギンガの頭部に直撃すると、スバルの左足が先に着地、 すぐさま左足を軸に右回転し右の裏拳でギンガの右脇腹を狙うが、ギンガはそのままの姿勢で後退、難を逃れた。 そして互いに睨みつけている中で、スバルがゆっくりと言葉を口にし始める。 「ギン姉!目を覚ましてよ!!」 「黙れタイプゼロ・セカンド!!よくも私の“妹達”を傷付けてくれたな!!」 ギンガの思わぬ言葉にスバルは目を丸くして動揺を隠せないでいると、ギンガは説明を始める。 ナンバーズは私達の妹達、その中でノーヴェは自分達と同じ母クイントの遺伝子から生まれた存在であるという。 「それにこの世界はもはや終わりを迎え始めている!!」 時空管理局は魔法技術を独占する事により、エインフェリアやヴァルハラなどの兵器を生み出し混乱させている。 既にこの世界は腐敗している、だがその原因である膿みを全て取り除いたとしても既に世界は手遅れな状態、 故にスカリエッティ達はこの腐敗した世界を材料にして、新たな世界ベルカを創り出すことにした、 たとえその際に痛みが伴おうとも血が流れようとも、腐った世界をいつまでも放置する訳にはいかない。 「死に瀕したこの世界を苗どころにして何が悪い!!」 この戦いは自分達が生きられる場所を獲得する為の戦い、 それはつまり妹達が安心して暮らせる世界を手に入れる為を意味する。 この意味を同じ存在でもあるスバルであれば理解出来るハズだと、 ギンガの言葉に出しスバルは俯き暫く沈黙を守ると、ゆっくりと顔を上げ口を開き始める。 「ギン姉…それは間違っているよ……」 スバルは決意ある瞳でギンガの主張を断ち切る、 確かにギンガの主張は尤もである、だからといって関係無い人達を巻き込む戦いは間違っている、 たとえこの戦いによって新たな世界が構築されたとしても、人々の血の上で成り立つ世界が認められる訳が無い。 「どれだけ奇麗事を並べても…体のいい理由を並べても!犯罪は犯罪なんだよ!!」 スバルの言葉にギンガは俯きジッと静かに立ち尽くしていると、 最早語る言葉が無いと悟ったのか構え始め、スバルも呼応するように構え始め、互いに言葉を口にする。 「私は絶対にギン姉を助けて見せる!!」 「私はタイプゼロ・セカンドの目を覚まさせる!!」 それぞれの思いをと共にスバルはエクストラモードを起動、リボルバーナックルとマッハキャリバーは真っ黒く染まり、 バリアジャケットとリボンは黒に近い緑色へと変わり、リボルバーナックルには赤い魔力が帯びていた。 一方ギンガはレリックを全開にして魔力を上昇、体に魔力を纏うとブリッツキャリバーから左右合わせて四枚の魔力翼を発生させる。 すると先にスバルが動き出し右拳を頭部目掛けて振り抜くが、ギンガは頭を下げてこれを回避、 逆にカウンターとして左のアッパーが襲い掛かるが、スバルは右足を半歩下がらせて前髪を掠める程度に終わらせる。 すると今度は身を引いたと同時に引いた右拳でギンガの顎を打ち抜き 更に左足を軸に左回転、その勢いを乗せたまま再度顎を打ち抜き、ギンガの身と共に跳ね上がる。 そしてギンガは勢い良く跳ね上げられ宙を舞う中でスバルは一足先に着地、 するとギンガはウィングロードを空中に作り出し足場にすると真っ直ぐスバルの下へ延ばす、 続いてリボルバーナックルから三発カートリッジを消費させると手刀に構え高速回転させる、 そしてA.C.Sドライバーを用いて一気に加速、スバルに襲いかかった。 「これで終わりよ!!!」 ギンガの攻撃が迫る中でスバルはギンガを見上げると更に半歩下がり、 右のリボルバーナックルから三発カートリッジを消費、纏ってた赤い魔力が更に濃くなる。 「うおおおおおおおおおっ!!!」 そして一気に拳を地面に振り下ろし地面を砕くと、亀裂から赤い魔力が姿を現れギンガに襲いかかり、 ブラッディカリスはギンガの体を何度も叩き打ち続けその中、レリックが胸元から姿を現し始める。 どうやら非殺傷設定による魔力への攻撃によりレリックを制御する魔法陣が支障を来たし、 レリックの制御が出来なくなった為、表に現れたようである。 だが物理破壊設定も設定されている為、魔力に晒されたレリックにヒビが入り爆発、 ギンガは宙を舞い地面へと落下、その姿にスバルは駆け寄るとギンガの戦闘スーツは爆発の影響により、 至る所が破けており、仰向けのまま倒れいて暫くするとギンガがゆっくりと目を覚ます。 「………ス……バル」 「ギン姉!!」 スバルはギンガの身を抱えるとゆっくりと笑みを浮かべ、その表情に涙を浮かべるスバル。 どうやらギンガは今までの記憶を覚えているらしく、自分が犯罪に荷担していた事に猛省していた。 「ゴメン…ね……スバル」 「そんな!ギン姉は悪くないよ!!」 悪いのはギンガを洗脳した人であると力強く答えスバルの答えを静かに聞くと、徐に左手のリボルバーナックルを取り外しスバルに渡す。 どうやらギンガはスバルとの戦闘や発言から成長を感じ、本来のリボルバーナックルを扱う事が出来ると考えたのである。 スバルは暫くの間、目を閉じ沈黙すると意を決したように目を見開きリボルバーナックルを受け取る、 そして左手に填めると拳を合わせ左のリボルバーナックルは右のリボルバーナックルと同じ色形となった。 スバルの凛とした勇姿をこの目で見たギンガは安心したのかゆっくりと目を閉じ、 その反応にスバルは駆け寄るとティアナが姿を現し、ギンガの様子を調べ気を失っている事を確認、 スバルはホッと胸を撫で下ろすとティアナは医療チームに連絡、その後暫くして医療チームが姿を表し、 ギンガとノーヴェが搬送される事を確認すると二人は新たな場所へと赴くのであった。 一方レザードは順調にヴァルハラに向かっており、行く手を阻むアインヘリアルなどまさに一蹴とも言える攻撃で蹴散らしていた。 そして目の前にヴァルハラの姿を捉えると、丁度間にエインフェリアのゼノンが睨みつけており、 足下には巨大な魔法陣を敷き詠唱を行っているように見えた。 「我が手に携えしは悠久の眠りを呼び覚ます天帝の大剣、古の契約に遵い我が命に答えよ!!」 するとレザードを中心に巨大な魔法陣が現れ、周囲から炎がレザードに向かって迫り火柱となって燃えさかる、 その光景にゼノンは確かな手応えを掴み勝利を確信した表情を浮かべるが、直ぐに驚きの表情に変わる。 「ふっ…この程度の炎で私の相手を?」 不敵な笑みを浮かべ眼鏡に手を当てるとグングニルを向けて、 まるでこれが本当の炎であると言わんばかりにえ詠唱を始める。 「我焦がれ誘うは焦熱への儀式、其に捧げるは炎帝の抱擁!!」 レザードの詠唱によりゼノンの周囲は炎に包まれ逃げ場を無くすと、炎は臨海点を超えたかのように大爆発を起こす。 イフリートキャレス、レザードが扱う炎の広域攻撃魔法の一つである。 「…己の分を弁えることですね」 ゼノンはなす統べなく一瞬にして消滅、レザードは何事も無かったかのように先に進む、 …その後方でははやてが唖然とした表情を浮かべていた。 あの男レザードは局員が手こずるエインフェリアを一撃で葬った、 それ程までに奴と我々との間には差があるという事を見せつけられた瞬間であった。 …とは言えはやてもまたエインフェリアを一蹴していた事実は棚に置いているようである。 それはさておき、そんな事を考えながらもはやては引き続きレザードの後を追うのであった。 場所は変わり此処ゆりかご内ではアリューゼとグレイが協力し合ってガジェットや不死者を撃破していき、 そして目的の地であるスカリエッティのラボへ続く管制室に辿り着くと其処にはクアットロが佇んでいた。 「まさかぁ不死者が反旗を翻すなんてねぇ」 不死者は基本的に自分の意志を失っており、普通であれば有り得ない事である。 つまり珍しい検体、本来なら解体して念入りに調べたいところであるが、 ゆりかご内でこれほど暴れてられて貰っては処分せざるを得ない、 そう言うとクアットロは指を鳴らし、周りからガジェットIV型が五機姿を現す。 「チッ!めんどうだな!!」 アリューゼは一つ舌打ちを鳴らしガジェットを睨みつけていると、グレイから念話が届く。 その念話の内容とは此処は自分に任せて先に進めというものであった。 (…任せていいんだな) (あぁ…) 二人は念話で段取りを合わせると、意を決したように剣を構える。 するとそれを見たクアットロは右手をかざし振り下ろすと、ガジェットIV型は一斉に動き出し襲い掛かってきた。 「行くぞ!アリューゼ!!」 「おぅよ!!」 二人もまた飛び出すとガジェットの一体が右前足の刃でアリューゼに襲い掛かる、 だがアリューゼは刀身にて受け流すと、そのまま胴を断ち切った。 するとアリューゼの動きに合わせてグレイが氷の弾丸を用いて二機を足止め、その隙にアリューゼは先に進み、 クアットロに迫ると残りの二機が立ちふさがるようにして襲い掛かってきた。 「邪魔を…するな!!」 するとバハムートティアのカートリッジを一発消費して全身を闇に包み込み、 ダークを発動させてガジェットの後ろを取ると、レンチングスイングで二機を一瞬にしてスクラップへと変える。 そしてそのままクアットロを飛び越え先へと進み、クアットロは振り返り邪魔をしようとしたところ、 後方から何かが砕け散る音が響き、振り向くと其処にはガジェットを凍り付かせ、 更に砕きバラバラとなった残骸が足下に広がり、その中心にはグレイが佇んでいた。 「あら?もうやられちゃったのぉ~あっけなぁい」 「……残りはお前だけだ」 グレイはクアットロが戦闘型では無い事を知っている為か、降参するように促すと、 クアットロは不敵な笑みを浮かべ拒否、そして徐に眼鏡を外し髪留めも外し始める。 するとクアットロから魔力が溢れ出し、思わずグレイは目を疑う。 「まさか、リンカーコアを!?」 「ご名答~」 クアットロはレザードの役に立つ為に自らの手でリンカーコアを埋め込み、それにより魔力を手に入れた、 だがそれだけではない、更にレリックをも埋め込み能力を向上、更にはお手製のデバイスを用いるという。 「J・D、セットアップ!」 するとデバイスは起動、シルバーカーテンはフードの付いた妖美なバリアジャケットとなり、 髪の色も赤く変化、顔色も変化し手には頭蓋骨をモチーフとした禍々しい杖が握られていた。 「ふふふっアナタの命運も此処までぇね!」 そう言って杖を振るうと三本のダークセイヴァーがグレイに襲い掛かる、 だがグレイは一つ一つ丁寧に叩き落とすと、クアットロに迫る、がシャドーサーバンドと呼ばれる闇魔法を発動、 グレイの足下から悪霊を模した魔法が姿を現しグレイを跳ね飛ばす。 そして空中に投げ飛ばされる中でグレイは氷の弾丸を発射、 氷の弾丸はクアットロに迫る中、杖を振り抜き衝撃波を発生させてこれを相殺した。 相殺された氷の弾丸が粉雪のように散りばめる中でグレイは床に着地、すぐさまクアットロに向かうと、 クアットロは先程と同様にダークセイヴァーを放ち、グレイは受け流しつつ迫っていく、 そしてグレイは刀身を振り下ろすが、クアットロは左手を向けてディフェンサーを張り攻撃を受け止め、 右手に持つ杖を振り払い衝撃波を撃ち出し、グレイ吹き飛ばされて壁に激突した。 グレイが激突した場所は土煙に覆われていたが隠れる事無く姿を現す、 …がグレイの左腰には切れ目があり、本来あるハズの肉体が無い事を知られる事となった。 「肉体を失い、魂のみの存在とはねぇ」 益々興味に尽きない対象であるが、これ以上被害を被る訳にも行かないし付き合っている訳にも行かない、 何故ならクアットロはガジェットや不死者の制御の全権を任されている為だ。 そこでクアットロは杖を床に突き刺し巨大な幾重にも描かれている多角形の魔法陣を張ると詠唱を始める。 「我、久遠の絆断たんと欲すれば、言の葉は降魔の剣と化し汝を討つだろう」 するとクアットロの頭上から巨大な槍が現れ、その矛先はグレイへと向けられいた、 その中でグレイはクアットロは早期に決着をつける気である事を悟り、 残りのカートリッジを全弾消費、この一撃に全てを賭けた。 「ファイナルチェリオ!!」 「奥義!アイシクルディザスター!!」 クアットロはかざした手を振り下ろすとグレイ目掛けてファイナルチェリオが襲い掛かる、 …がグレイは臆する事無く突撃、ファイナルチェリオはグレイの左半身に深く突き刺さり、左腕と左上半身を失う、 だがグレイの突撃は止まらず、その気迫に圧されたのかクアットロは一歩も動けないでいた。 そしてグレイの刀身がすり抜けるようにしてクアットロを貫くと、後方から氷の弾丸が次々とクアットロの体を突き刺し、 更に弾丸を中心に凍り付き始め、クアットロは必死な形相で抜け出そうとしていた。 「そっそんな!?こんな所で私が―――」 だがクアットロは全ての台詞を吐く前に全身を凍り付かせ氷のオブジェを化す、 それを見たグレイはオブジェに近付き刀身を構えると、 勢い良く振り上げ、その一撃により氷のオブジェはクアットロと共に砕け散った。 …しかしグレイもまたファイナルチェリオの影響により鎧に亀裂が走っており、いつ砕けてもおかしくない状態であった。 ――そして徐に天を仰ぐ…自分のすべき事、成すべき事は全てやった、 ――後の事は他の生きている人達に任せよう…それが自分に出来る最後の仕事である――と… そう悟り一つ小さく息を吐くと、ふと自分の周囲が明るい事に気が付き辺りを見渡す、 すると丁度グレイの立っている位置の三歩先に、親友であるカシェルとエイミの姿を目撃する。 「あぁ…迎えに来たのか……」 グレイは小さく呟くように言葉を口にすると、二人は満面の笑みを浮かべ出迎える、 その表情に安心したのかグレイは歩き出すと、その姿は鎧だけの姿では無く人の姿のグレイであった。 そしてグレイはエイミとハイタッチを交わし、カシェルに腕で首根っこを掴まれ、 肩を寄せ合い、笑い合いながら三人は光の中へと消えていく…… そして…その場は静寂に包まれ、グレイの鎧が別れを告げるように音を立てて崩れていった… 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